第64話4

文字数 698文字

ちょっと信じがたいけど実際に目の前で見てるからなあ。

中伊さんはどう思います?

そちらを拝見しても? ありがとうございます。

青藍(せいらん)紅柑子(べにこうじ)鬱金色(うこんいろ)鶸萌黄(ひわもえぎ)中紅(なかべに)黄橡(きつるばみ)撫子色(なでしこいろ)……いくつか見たことのない色もありますね。どれも濁りなく澄んだ色をしています。

よい品質の石ですがこの大きさでは人形雛にも使えないでしょう。これがあれば機巧姫と連れ合いになれるというのはにわかには信じられませんが……

これは茅葺さんに見てもらおう。

研究の助けになるかもしれないし

 上手くいけば機巧操士不足という問題が解決する可能性だってある。
それで紅樺の君は不動がもらってしまっても構いませんか?
勿論ですとも。

本来、機巧姫はお武家様と共にあるもの。商人である私が持つなど分不相応ですよ。

それに私に必要なものはもうありますから

お父さん……
 紀美野さんの手が中伊さんの手に重ねられた。

 無事に取り戻せて本当によかった。

じゃあ、紅樺の君も茅葺さんに預けよう。

修理については僕たちもできる限り手伝うってことで不動もいいかな

やっぱりそれが一番だよな。

反対はしないぜ!

数珠のこと以外に何か聞き出せた?
いいや。残念だけどそれだけだ
そっか。

それじゃあ、そいつも城まで連れて行って藤川様に今回の顛末を報告をしよう

それが……もう無理なんだ。

そいつ自害したらしくてさ

……そうなんだ

 これ以上の情報を漏らすことを避けるために自害したのかな。

 でもそれならどうして数珠の情報を口にしたんだろう。話す気がないなら黙って自害するような気がするんだけど。

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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