第64話2

文字数 507文字

というわけでさ


 胡坐をかいていた不動は器用に体を動かして中伊さんの方を向く。
俺に紅樺の君をくれないか。頼む!
あれはもう壊れてしまったのではないですか

 刃が何度も胴体を貫通しているし左腕も斬り飛ばしてしまった。

 あれは修理でなんとかなるレベルなのだろうか。

 そもそもの話として不動が連れ合いになれるかどうかもわからないんだけど。

そういえば日影はどうなったの。

首領っぽかった宿曜のあいつ

 出会ったばかりの紅樺の君と共感して機巧武者になった男。

 可能ならどういう原理で機巧武者になったのかを聞き出したい。

 あの技術はきっとこれからの関谷に必要になるものだ。


 あっと短く叫んだかと思うと露骨に不動の挙動が怪しくなる。

 見れば紅寿と翠寿もバツが悪そうに俯いていた。

じ、実はその…………
ごめん、聞こえなかった
……逃げられた
へえ。あの状態でよく動けたな

 機巧武者の姿をとっている時に負ったダメージはある程度まで機巧姫が受け持ってくれるけど機巧操士にも相応の負担はある。

 かなりの損傷を受けた青藤の君の操士がまだ回復しきっていないように。

 しかも機巧武者になった後はかなり疲労する。僕なんていまだに動くことすらままならないんだし。

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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