第20話3
文字数 710文字
改めて御膳を見る。
中央に白飯の入ったお椀。右には具材の入っていない汁椀があり、左には薬味などの入った小皿がある。
これはお茶漬けのようなものなのだろうか。
織田信長も湯漬けが好きだったという。
あの時代は火をおこすにも手間がかかるから温かい料理を出すのは難しかった。だから簡単に沸くお湯を利用して温かい食事を食べていたらしい。
薬味を白飯の上にまぶし、汁をかけいれる。
ほかほかと湯気が立ち、いい匂いが鼻腔をくすぐる。
箸をもって食べようとお椀を手に取ったときだった。
白飯が汁でほぐれて、その下から肉や魚、色とりどりの野菜類、小さなサイコロ状に切ってあるのは豆腐だろうか。いろいろなものが汁に溶け出してきた。
これは手が込んでいる。
藤川国王のセリフはこの驚きのための演出だったのか。
儂は飯で遊んでなどいないぞ。飯は旨くなければいかん。見た目も美しくあるべきだ。
その上で驚きがあればさらに旨く感じよう。
もっとも、気に入った者を驚かすのが好きなのは否定せんがな
ちょっと濃いめだが悪くない。というか素直に旨い。
味付けから判断するに醤油や味噌もこの世界にはあるのだろう。食べ慣れた日本の食事とほぼ変わらなかった。
食事の合う合わないは活力に直結するだけに嬉しい展開だ。