第31話3

文字数 429文字

 基本的に有名な機巧姫は過去に生み出された名品ばかりだ。

 だが主人に巡り合えず人知れず朽ち果てたり、戦火に焼かれたりして失われたものも多い。

古いのもあっていろいろ痛んでて修理に時間がかかってるみたいだし、直ったとしても私と連れ合いになれるかはまだ確定してないんだけどね……

 一方で今の技術で機巧姫を再現、あるいは新作として造りだすことも行われている。そうして造られた人形を新人形(あらひとかた)という。新式――新しい作風の機巧姫や人形雛のことだ。


 ちなみに人形雛っていうのは機巧姫のような自我はないけど、簡単な命令を実行できる人形のことだ。廉価版の機巧姫とでも言えばいいだろうか。

 当然だけど、彼女たちは機巧武者にはなれない。


 とはいえそれなりに値段がするものなので、家事とかをさせる召使いロボットというよりは観賞用の人形に近い扱いをされているそうだ。

 他には人形雛を持てるほど裕福なんですよというステータスか。いつの時代でも見栄を張りたい人はいるものだ。

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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