第54話4
文字数 788文字
揺らめく灯りでも灰桜の木目ははっきりと見ることができる。
僕たちの会話は聞こえていないようでピクリとも動かない。
購入したお客様は化粧師に希望を伝えます。優しい顔立ちがいいだとか、凛々しい性格の子にして欲しいだとか。
そういった意向を汲んだ化粧師の手によって人形に命が吹き込まれるのです。そちらの葵の君のように
それはわかる。
髪の色さえなければ葵は人間そのものだ。
だというのに最低限の下地だけを整えてくれればよいとおっしゃられまして。
最初の化粧は通常ですと最低でも一週間。拘る方なら一月以上はかかるものなのですが
そういうことなら化粧に拘るのもわかる。
せっかく手に入れた機巧姫を自分の思い描く通りにできるというのに、それをしないというのだからおかしいと宇頭さんが思うのももっともだ。