第2話3
文字数 910文字
もっとたくさん弓を射るのです。
これではご褒美が……ご馳走が!
もっとも自分たちにまでご馳走が振舞われる可能性は低いだろうなと澪は思っているのだが。
一度食べたときの記憶をもとに食堂で美味しい食事をいつも出してくれる
戦場にありながらこんな調子でいいのだろうかと澪は首をかしげたくなる。
まるで
だがそのおかげで肩の力はすっかり抜けていた。
本来、絶望的な状況なのだ。
この陣に攻め寄せる敵機巧武者の数はこちらの何倍にもなる。さらに歩兵も二倍以上が動員されている。
相手より多い兵を揃えて戦うのは基本中の基本。
この基本を守れている以上、数で押しつぶせばよいという敵の戦術は何も間違っていない。
もちろん、澪たちもただ手をこまねいていたわけではなかった。
敵が国境を超える前から物見の兵を張り付かせ、少数の斬り込み隊によって敵補給部隊を繰り返し襲撃した。
相手を挑発し、夜討をし、時間を稼ぎ、この日、このとき、この場所へ誘導したからこその状況である。
戦力差はあるが策もなく戦っているわけではない。絶望もしていない。
だから今はただ己の役目を果たすのみである。
澪の言葉に二旗の機巧武者がうなずいた。
いまだに薄氷を踏む状況であるには変わりがない。