第38話1 夜道はどこまでも暗い
文字数 781文字
夜道はどこまでも暗い。
早速購入したばかりの提灯を葵に持ってもらって歩いていく。
街灯のない町は暗い。
たまに明かりが外に漏れているお店もあるけど、少し離れたら真っ暗だ。
気が付いたら澪は大人しくなっていた。
さすがにお姫様抱っこで移動するのは歩きにくかったので、今は背中に負ぶっている。
すぅすぅと一定のリズムで呼吸が首筋にかかってくすぐったい。どうやら寝てしまったようだ。
二人分の足音と澪の呼吸音だけが聞こえる静かな夜だった。
操心館の周辺はしんと静まり返っている。
昨日のお城帰りのときにも思ったけど、この辺りは住んでいる人の数が少ないせいか、とても寂しい。
そもそもここは軍事施設なわけで、防衛上の観点からするとそれが当たり前なのかもしれないけど。
澪の部屋に直接向かってもいいんだけど、紅寿に怒られそうだから翠寿というワンクッションを置こうと思う。
送り狼なんてしてないからね?
ここまでちゃんと連れ帰って来ているわけで、文句なんて絶対に出しようがない状況なんだけど、何事にも誤解っていうものがあったりするわけで。
石橋は叩いて渡る。これ、大事。
寝癖がついたままの翠寿が部屋の前で出迎えてくれた。
耳がぺたっとしていて、これはこれでとてもかわいい。
全然呂律が回ってない。悪かったなあ。
この世界では日が暮れて暗くなったらすぐに寝てしまう。そのかわり朝が早いんだけど。仕事だって基本的には昼過ぎで終わりだ。