第22話3
文字数 693文字
葵は初めて出会ったとき、僕に「戦って生き残らなければならない」と言った。
『とある小国にて一人の機巧姫と主人公は出会い、戦乱に終止符を打つべく立ち上がった……』
ゲームの謳い文句として『カラクリノヒメ』でその
関谷は小国だ。
機巧姫――葵の君と出会った。
そして目的は戦乱に終止符を打つことだと言われた。
すべてゲームと同じ状況になっている。
この世界のベースは『カラクリノヒメ』によく似ている。
もちろん違うところもあるけど、それらの多くはゲームで設定されていなかった部分だ。この世界が破綻をしないように上手に補っているとも言えた。
僕の懸念は、僕自身が知らないうちにこの状況に自分を引き込んでいるのではないかということだ。
正直、ここに来たことはゲームクリエイターとして美味しいと思っている。
この世界で見たこと、聞いたこと、体験したことをゲーム制作に反映したい。
僕は根っからのゲーム屋だ。面白いゲームを作りたい。そのために調べ物をしたり、様々な作品に触れたりしてきた。
ここでの経験は貴重だ。
本を読んだりネットを見たり取材旅行に行ったりするよりも多くのことを僕は学び、体験することができるのだから。
だからこそ前向きに目標に向かって取り組みたいと思っているし、望んで脇道に逸れてこの世界を味わい尽くしたいのだ。
それが自作自演では興ざめだ。
ワクワクした気持ちが霧散してしまう。
そういった意味で保証が欲しかった。
この世界は僕の妄想ではないという保証だ。