第31話2

文字数 779文字

木材はたくさんとれるからね。

それを加工したものを生産しているんだよ

 だからこの国は木材の加工品が特産物で、国も生産を推奨しているのだそうだ。

 建材から桶やお椀といった日用品から神木を使った機巧姫まで。関谷産の木工品といえば全国でも有名なんだとか。


 木工品を他国へ輸出しているということはある程度の大量生産が可能であり、相応の消費者が存在するわけだ。

 もしかしたら手元の資金で人を集めて現代世界の何かを作ってウハウハできるのではなかろうか?

 人を集めて大量に物を作ることが可能というのは覚えておいて損はない。

結構、商業活動が活発なんだね
国は小さいけどそこそこ豊かだと思うんだよね。

それに水蛟(みずち)たちのいる水江(すいこう)島とも交易してるし

 薩摩藩における琉球王国のようなものだと考えればいいのだろうか。朝貢関係にはないみたいだけど。

 その島は機巧姫の勾玉となる神石がとれる数少ない土地らしい。


 単純な石高だと関谷は小国に過ぎないけど、現金収入を含めると上国(じょうこく)をも上回るんじゃないだろうか。


 良質な木材と水江島でとれる貴重な石が入手しやすい土地だからこそ、関谷は古くから人形の生産地として有名だった。

 必然的に機巧姫に関わる人たちがこの国へ集まり、多くの名品が生み出された。

 そんな土地だからこそ、今を生きる人形師たちは関谷にやってくる。操心館にいる調律師の茅葺さんもそういった一人らしい。

茅葺さんは腕のいい職人なんだろうね
うん。でなきゃあんな大事な仕事を任されないし。

私の水縹も早く直してくれるといいんだけど、今は青藤や深藍の君のが優先だから

よかったら澪の機巧姫にも会わせてよ
動けるようになったらね。

水縹だって過去の戦では活躍したことが知られているんだもん。きっといい子だと思うんだよね。

葵の君も仲良くしてあげてくださいね

はい、勿論です
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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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