第58話5
文字数 497文字
体から大量の血液が流れ出ていく感覚がある。
手足の先が痺れ、冷たい。きっと熱い血液が流れ出ているから熱も奪われているのだ。
ガチガチと歯が鳴っている。意識が遠くなる。
葵の声が耳元で聞こえる。
一瞬、気を失っていた。
顔を上げる。
頬に触れる柔らかな感触。
温かい。じんわりと熱が伝わってくる。
心なしか体の奥底から力が湧き上がってくる気がする。
手を伸ばす。
誰かがその手に触れた。
そして導かれる。
指先が硬いモノに触れる。
トクントクンと脈動している気がする。
温かい。何か大切なものが指先を通じて伝わってくるみたいだ。
視界が霞む。
目の前にあるものがはっきり見えない。
聞こえていた声も遠くなっていく。
ああ、そうだ。
僕はまだ終われない。
ここで見たり聞いたり体験したことをゲームに反映しなくちゃいけないんだから。
だから、だから――
――力が欲しい!