第28話1 調練場はかなり広い
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調練場はかなり広い。
機巧武者での模擬戦を前提にしているので当たり前なのだが。
さて、これから猪武者を相手にしなければならないわけだが。
そう思って振り向くと、頭から湯気でも出しているんじゃないかという表情で
カッカした状態でも煽りを入れることは忘れないんだな。
いい根性だ。
初めては状況が全くわからない状態で、気が付いたら機巧武者姿になっていた。
だから自分の意思で機巧武者になる方法がわからないのだ。
魂の形をしているとも言われる勾玉に触れたまま瞳を見つめ、心の中で強く願う。
――力が欲しい!
次の瞬間、己の中にとてつもない力がみなぎっている。
人にはとても及びもつかない圧倒的な力を手にする。
常人であれば今にも暴れだしてしまいそうな力を手にしていながら、心は波紋一つない湖面のような冷静さを保っている。五感は極限にまで研ぎ澄まされていた。
力と心、すべてが己のコントロール下にある。
地面を見下ろす。
少し離れたところに、澪と翠寿、不動の姿が見えた。