第63話2
文字数 621文字
隣に座った中伊さんの顔には精気が戻っていた。
初めて出会った時と同じ、年相応で温和な父親の顔をしている。
味見に使ったお椀を置いた中伊さんが居住まいを正してこちらを向く。
そういえば澪はどこだろう。それに不動の姿も見えない。
部屋を見渡すと隅の方に横になっている人がいた。
その隣にはまるで見張り番でもしているように片膝を立てた紅寿が座っている。
紅寿と視線が合ったと思ったら、すっと逸らされてしまった。
悲しくなるのでそういう反応はやめていただけないでしょうか。
壁に向かって寝ていた澪が寝がえりをうつ。
座っていた紅寿の体が瞬時に反応して顔を覗き込むけど澪は眠り続けていた。