第21話1 お城での食事を終えて操心館へと戻ってきた

文字数 812文字

 お城での食事を終えて操心館へと戻ってきた。


 外はすっかり暗くなっている。

 道中に外灯の類は一切なく、本当に真っ暗だった。提灯を持った澪がいっしょにいてくれなかったら、足がすくんで動けなかったかもしれない。

ここがキヨマサ君の部屋になるんだけど……
 火のついた行灯(あんどん)を手に部屋まで案内をしてくれた澪が中を見て固まっていた。
はわぁ、すごい立派な部屋なんだね……びっくりしちゃった

 案内された先は襖で仕切られた八畳二間の部屋だった。

 印象としてはちょっといい感じの和風旅館ってところだ。落ち着いた雰囲気で悪くない。何より畳敷きというのがいい。

 畳の上なら板間と違ってごろりと横になることも可能だ。そういうのに憧れていたんだよ。僕の部屋はフローリングだったからな。


 手前の部屋の隅には文机がある。こちらが普段使いの部屋で、奥が寝室だろうか。

 二部屋あるのなら僕と葵で使い分ける形でいいかな。

 葵に部屋の奥を使ってもらって、僕がこちらの部屋を使おう。

澪の部屋は隣になるんだっけ
うん、そうなんだけど、私なんかがこんなに立派な部屋に移ってもいいのかなぁ。

ここって上士用の部屋なんだよね

 上士とはつまり上級武士のことだ。

 知行を持つ澪だって上士だろうに。

明日は操心館を案内するね。

みんなを紹介したいけど、まだ国境に詰めている人もいるから全員は無理かな

うん、よろしく
 今のところは敵の動きもなく、国境付近を厳重に警戒している。

操心館に所属している操士もそれに加わっているそうだ。

今日はいろいろと助かったよ。

澪がいてくれなかったら行き倒れになっていたかもしれないし

それはないでしょ。だってキヨマサ君ってすごく強いんだし。

あと精神的にも強かったしね

そうかなあ
そうだよ。

私、国王様に直接声をかけられるなんて初めてのことで、頭の中真っ白だったんだからね

 あー、思い返してみると、澪って「はっ」と「ははっ」しか言ってなかったような気がする。
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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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