第42話1 問題はどうしたらご機嫌をとれるかだ

文字数 704文字

 問題はどうしたらご機嫌をとれるかだ。
どうすれば気に入っていただけるんでしょうか

 中伊さんは顎に手を当ててしばらく考える。

やはり酒でしょうな
水蛟はみんなウワバミだからね
それなら澪と話があい――グフッ

 わき腹を肘で小突かれた。

 一瞬、息が止まったんですけど……。

リュウセンジ様とは先々代である祖父の頃からお付き合いをさせていただいておりますが、最初はけんもほろろだったそうです。

ですがある時、大量の酒を献上したところ機嫌が一転して、それから取引をさせていただけるようになったと聞いております

わかりました。

貴重な情報をありがとうございます

いえいえ。上等な酒でないと雷が落ちかねませんから娘に用意をさせましょうか。

あれは酒が好きで、いい酒をよく知っております。

どうせなら石の良し悪しがわかるとよかったのですが……

失礼ね。

お料理の良し悪しだってわかりますっ

 いーっと紀美野さんは歯を見せる。

 結構、子供っぽいところもある人だ。

それは助かります。

笠置屋で飲んだお酒も美味しかったので是非お願いしたいです

 あのお酒は美味かった。

 あれなら好みの違いがあっても酒好きなら気に入ってもらえると思う。

ところで、こちらでは機巧姫に使う勾玉も扱っていると聞いていたのですが、お店には並んでいないのでしょうか

 見た限りでは簪や櫛といった装身具が中心だ。

 並べられた品はどれも見事な細工が施されているけど、葵の胸元に埋まっているような勾玉らしきものはどこにも見当たらない。

 見た限りでは簪や櫛といった装身具が中心だ。

 並べられた品はどれも見事な細工が施されているけど、葵の胸元に埋まっているような勾玉らしきものはどこにも見当たらない。

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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