第13話2

文字数 658文字

 戦国時代あたりだと固定の市場はまだないところがほとんどで、月に何日か定期的に開かれる感じだったらしい。

 近隣の村々で順番に市が開催されるので、扱っている商品が多い商人は市が開かれる村を渡り歩いて売りさばいていたという。

 今は人が少ないというけど関谷のいつもの姿も見てみたいものだ。

 設定でしかなかったものが、こうして目の前にある。そのことに感動しないクリエイターはいないだろう。

余所見してると迷子になるわよ
ならないよ。

澪じゃあるまいし

キヨマサ君だって迷子だったじゃない。

ほら、こっち。こっちの道に入ってしばらくいった先が目的地だよ

 連れてこられた先は町の中心から少し離れていた。

 町の中心部から距離があるためか、この辺りはほとんど道行く人がいない。

 足が向いている先に、ぐるりと板塀が巡らされている建物がある。どうやらここが目的地らしい。

 ところどころに櫓も設置されている。要塞というよりは陣屋だろうか。


 澪に続いて門をくぐる。

 門のところには大きな板に操心館(そうしんかん)と書いてあった。


 門を入ったすぐ先には二階建ての真新しい木造建築物がある。驚いたのはどことなく洋風を思わせるからだ。

 正面は八角の柱を八角形に配置した腰屋根。玄関ポーチは八角形の板石が敷き詰められ、外壁は下見板張りになっていた。

 建物に沿ってずーと視線を送ると大きな講堂らしきものが見える。その隣にあるのは弓道場だろうか。


 お寺や神社にしては施設がそぐわない。

 僕の知識の中で該当するとしたら学校だろうか。

 土足のまま澪は玄関に上がる。

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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