第52話1 そんなのがお土産で本当にいいのかなぁ

文字数 570文字

そんなのがお土産で本当にいいのかなぁ
だから大丈夫だって

 翌日、手土産を持って中伊さんの所へお邪魔することにした。

 同行者は葵、澪、それから翠寿だ。

 紅寿は操心館でやらなければいけない仕事があり、不動は日課の鍛錬をするので別行動だった。


 手土産として桜の葉を使ったお菓子を買い求めている。

 塩漬けした桜の葉で淡く色づいたお饅頭を包んである関西風の桜餅に似た品だ。

 店先で一ついただいたけど葉っぱから移ったほのかな香りと餡の控えめな甘みが感じられてなかなか美味しい。

 ただし一個当たりの大きさは見知っている桜餅よりずっと大きいんだけど。

お見舞いに持参する品なら普通はもっと精のつくものだと思うんだけど。

うなぎとかうさぎとかすっぽんとか

確かに栄養は取れそうだね。

でもすぐに手に入らないでしょ

うさぎならスイジュにお願いしたらすぐにでもとってきてくれるよ
とってくるです?
いや、必要ないよ
そうですか……
 とても残念そうだった。落ち込む翠寿も可愛い。
うなぎは仕掛けを使わないといけないから今すぐは難しいかも。

すっぽんは捕まえても泥抜きに時間かかっちゃうかな

本格的に紀美野さんが寝込んでいるのなら、そういうのを持っていくのはありかもね

 今回はそこが主目的ではない。

 あくまで様子がおかしかった中伊さんや笠置屋を休んでいる紀美野さんのご機嫌伺いに行くだけだ。

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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