第1話1 戦場は霧雨に煙っていた
文字数 824文字
戦場は霧雨に煙っていた。
細かな雨が視界を遮り、遠くのものは薄ぼんやりとしか認識できない。
眼下に滲んで見える影がじりじりとにじり寄ってくる気配を感じ取る。
この場を指揮する
胸を開きながらゆっくりと降ろしてくるように弓を引くとキリリと鋭い音がした。
雨が
引き絞られた弓から次々に矢が放たれる。
ヒィョゥと風を切った四
といった声も聞こえてきた。
囃し立てる声が聞こえたわけではないだろうが相手も弓を構え応射する。
しかし矢に勢いはなく、こちらの陣まで到達することはなかった。
相手を見下す笑い声があちらこちらから聞こえてきた。
緊張から口の中はカラカラで喉がひり付きそうだったが、それでも心の余裕を持つことはできている。
過度の緊張は疲労に繋がる。
だからそういうときは無理にでもいいから笑ったほうがいいと教えてくれたのは果たして誰だっただろうか。
弓構え、打起し、引分、会、離れ、残心。
双方の距離がある状態で少しでも相手の戦力を削っておかなければ澪たちに勝ち目はない。
事前に打ち合わせた作戦でもこの段階で可能な限り相手を倒すことになっていた。