第48話5
文字数 669文字
ほの香姫を嫁にどうだというお話でしたらあの場だけの冗談ですよ。
事実、藤川様だってあっさり引っ込めたじゃないですか。
じゃあ、あれですよ。英雄に憧れる乙女回路が混線しているだけです。
外の世界を知らないので、たまたま現れた珍しい人間に興味を持ったのを恋心と勘違いしただけのこと。
あ、わかった。わかりましたよ!
これはあれですね、僕をダシにして行動の自由を勝ち取ろうというパターン。それなら納得できる。
僕は当て馬。実に適切な役回りだ。
妹を思う兄の気持ちはよくわかる。できれば手助けしてあげたい。
だけどこれは無理筋の話のように思う。
そもそも藤川様が娘を戦場で戦わせることをどう考えるのか。
あの場では娘であっても機巧操士になってくれれば面目は立つと言っていたけど、それが本心かどうかはわからないし、本当に戦いの場へ送り込むつもりがあるのかというともっとわからない。
さて、どうしたものか。
白糸様は真剣な表情で僕を見ている。
まるで僕が正解に至る道を提示してくれるのを待っているかのようだ。