第7話2

文字数 930文字

 もしかしたら機巧武者になって戦うと体力を著しく消耗するのだろうか。

 あー、うん。ここがゲームをベースにしているのならば、それはありえそうだ。

 ゲームでいえば体力とか魔力とかそういうやつが枯渇した状態だと言えばいいか。

 なにがしか行動をするごとに数値を消費していき、時間が経過することによって回復するアレだ。場合によってはアイテムで回復させることもできる。

 それが機巧武者として戦うことで著しく減少していると考えられないだろうか。

ゲーム的な疲労まで再現とはよくできてるよな、まったく……

 連続してプレイしたければ回復アイテムを使用することで行動が可能になるわけだけど、果たして今の僕の場合はどうしたらいいのだろう。

 時間の経過で体力なり魔力なりが回復すれば動けるようになるのなら、このまま寝ていてもいいんだけど。


 課金の導線として疲労回復アイテムの購入はそれなりに太い。

 もっとも、一番課金されるところはランダム型アイテム提供方式――ガチャなんだけど。

 っていうかほぼこれと言っても問題ないレベルだったりする。

 みんな好きだよね。僕も好きだけどさ。


 やっぱり気に入った新しいキャラは誰しも入手したいと思う。それでしか手に入らないのならぶっこむしかない。

 僕は作り手側だけど、そこの気持ちはよくわかる。

 だからこそ魅力的なキャラを毎回投入したいと思っている。それはクリエイターの義務と言ってもいい。

いっそのこと、これが本当の夢であってくれたらいろいろと楽なのに。

僕が不便だと思うところは夢の力で即座に修正が入るみたいな

夢ではありません。

主様は間違いなくここにいらっしゃるのですから

 陽だまりのような微笑みを向けられて、自分の頬が熱くなるのがわかった。

 まさか照れているとか? 人形相手に?


 たしかに葵は美人だ。

 人形を美人という表現が適切でないのなら美形だと言い直してもいい。


 すっと刷毛で引いたような優しいラインの眉に、大きな瞳をした目尻が気持ち垂れているようで愛嬌がある。細く通った鼻筋に小さな口。薄めの唇はまるでグロスを塗っているかのように艶があった。

 色鮮やかで様々な模様のついた和服に袴をはいている。

 そのせいでスタイルがよくわからないのが少し残念だ。

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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