第33話1 澪様も化粧品はお持ちなのでしょうか

文字数 637文字

澪様も化粧品はお持ちなのでしょうか
うん。基本的なのは持ってるよ。

もっとも、私の住んでたところはこんな立派なお店はなかったから、背負(しょ)小間物屋(こまものや)から買った物ばかりなんだけど……

それでしたら吾に化粧のやり方を教えていただけないでしょうか
化粧を?
はい。吾は化粧を自分でしたことがありません。ですから澪様に教えていただけると大変助かるのです。

化粧の先生になっていただけないでしょうか

ええ!? そんな、私が先生だなんて無理だよ。

それにそういうのは普通、専門の化粧師(けわいし)がするものでしょ

操心館にはいらっしゃらないようでしたので
あ、そう言えば……でもでも私なんてお化粧下手だし……それに私のやり方は小間物屋の人に教えてもらった程度だから……
 断ろうとしている澪におそめさんが声をかける。
どちらから購入されていたのかは存じ上げませんが、各地を訪ね歩く行商人は最新の化粧品の使い方を熟知しているはずですよ

 ほほう、この世界では訪問販売までしているのか。

 売り物が大きくて持ち運べないような場合はカタログを見せてそれで売買契約なんてこともできそうだな。もっとも双方に信用がある場合に限るけど。

そ、そうなんだ……でもお化粧なんてほとんどしないし……
そうですねえ。

お客様の場合ですと、もう少し白さを強くして、鼻の高さを強調するようなお化粧にすると映えると思いますよ。白粉をよく溶かしてから塗るのがコツです

あ、ありがとう……ございます
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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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