第41話2

文字数 614文字

 いくつかある通りを曲がると目的の場所が見えてきた。

 このあたりは通りに面して建物が解放されており、庇の下に机を置いて商品を並べている。

ここって小物を扱ってるお店だよね。

しかも、結構、いいお値段のする

 看板には永寶屋(えいほうや)とある。

 澪の言う通り机には箱に入った綺麗な小物が並べられていた。

なに? どうかしたの?
 何事かと振り返ると澪の袖を紅寿が掴んでいる。
……っ
え? 私たちを見てる人がいるの?

 二人の会話を聞いて周囲を確認する。

 確かに道行く人たちの何人かは僕たちを見ているようだった。ただしその視線の多くは葵に向けられている。

葵があんまり綺麗だからじゃないの。気にしない方がいいよ

 葵を連れて歩いているとすれ違う人の多くが振り返る。それをいちいち気にしても仕方がない。

 ちらっと紅寿が僕の顔を見た後、握っていた澪の袖から手を放す。

ご迷惑をおかけして申し訳ございません、主様
いいっていいって。

そもそも葵が謝ることじゃないし

 こういうのを体験するとゲームで高レアキャラを持っているユーザーの気持ちがなんとなくわかる。羨望の眼差しを向けられるのって心くすぐられるもんな。
ごめんください
はぁい。

あら、昨夜の

 にっこりと微笑んで迎えてくれたのは居酒屋で会った紀美野さんだった。
昨夜のお酒と食事は美味しかったです。

こちらもアルバイト――お手伝いですか?

実はここ、わたしの家なんです。

お父さん! お父さん! 昨日話した機巧姫だよ

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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