第66話5

文字数 902文字

あれはその数珠を使った機巧操士なのではないかと僕は考えています。

そしてもしかしたら機巧姫も簡易な……それこそ人形雛に近いものだったのかもしれません

ちょ、ちょっと待ってよ、キヨマサ君。

人形雛は機巧武者にはなれないんだよ。勾玉が小さいんだもん。そんなのみんなが知ってることだよ

だからさっき言っただろ。常識が覆るって
 口をパクパクさせた澪は二の句を継げないでいる。
人形雛というのは言い過ぎだったかもしれません。

ですが機巧姫よりも簡易な作りの人形が開発されたと考えることはできないでしょうか

 機巧姫は一つひとつが異なる存在ですべてが一品ものだ。

 でもどこかで量産品のような人形が作られているのではないだろうか。

 津島屋でパーツ毎に作られていた人形を目にしている以上、否定することは難しい。

 それと数珠の組み合わせで霧峰が機巧武者の数を揃えているとすれば間違いなく脅威となる。

兄貴!

そいつを使って俺が機巧操士になれるのなら! いや、俺だけじゃない。操心館にいる奴がみんな機巧操士になれるのなら。霧峰にだって勝てると俺は思う!

そうだよ! 

私も水縹が直ったら機巧操士になれるはず。そうしたらこの国を守れるよ!

ああ。頼りにしてる。みんなでこの国を守ろう
それもすべてその数珠にそういう力があればの話ですがね。

数珠の調査はカヤブキさんにお任せするとしましょう

任せてください。

これはこれまで研究してきたことにも通ずると思います。どこかの誰かに先を越されたのは悔しいですが、改良してよりよいものにしてやりますよ

茅葺さんにはもう一つお願いしたいことがあるんです
 不動が背負っていた筵を取ってみせる。
機巧姫か。ひどい状態だな
今回の取引に使われた人形の一体です。もう一体は底なし沼に沈んでしまったので回収できませんでした。

これの修理もお願いしたいのですが

そもそも人形の修理が仕事だし断る理由はないよ。

それも任せてもらおう

お願いします!

俺、この人形の連れ合いになりたいんです。機巧操士になってこの国を守りたいんです。だからお願いします!

あのあの、私の水縹はどうなんでしょうか?
ああ、その件なんだけど須玉匠から返事が届いたんだ。だから――
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色