第60話4
文字数 430文字
声が聞こえる。
どこからだろう。
近くのようであり、遠くのようでもある。
バラバラに解けていた意識が戻ってくる。
まず感じたのは痛み。
頭とお腹。お腹の方は熱を持っている。とてつもなく痛い。大穴を開けられたのだから当然だ。
主様なら大丈夫です。立てます。
そして勝ちます
葵の言葉に思わず苦笑いが出た。
授業でやっていた剣道の面とは比べ物にならない衝撃だったんだよ。まだチカチカとした光が見えているぐらいすごい一撃だったんだ。
それなのに大丈夫な訳がないだろうに。
でも大丈夫だと言ってもらえたおかげだろうか。立ち上がる気力が湧いてきた。
真っ暗だった視界にじわじわと色が戻ってくる。
ぼやけた世界に何かが映る。
澪だ。
四足の美しい毛並みをしたケモノにまたがっていた。