第23話3

文字数 636文字

葵の君の着替えが終わったら食堂で朝ご飯を食べて、それから操心館を案内するね
授業に出なくていいの?
うん。こういう状況だから次の対策を急いで練らないといけないもんね。

今は国王様の指示で国境周辺を固めているけど、どうなるかわからないし。

だから当分は授業どころじゃないと思うよ

 国防はなにより優先すべきだもんなあ。

 現状は後手に回りすぎている。こういうのは先手先手で動かないと、いざというときでは遅すぎるわけで。

 一度侵入を許している以上、国境の警備強化は最優先事項だ。

それにソウゲン様の青藤の君はかなりひどい状態だったから、まずはあれをなんとかしないといけないしね。関谷は機巧武者が少ないから……

 それと並行して防衛力の強化。具体的には不足している機巧武者を増やすこと。

 それがこの操心館なわけで、国としてもこういう事態を見越して手を打とうとはしていたんだろう。

 ちょっと遅かったけど、何もしていないよりはましか。

澪の機巧姫も修理中なんだよね
うん。水縹はかなり古い子なのもあって修理に時間がかかりそうなんだって。

修理待ちの機巧姫ばかりが増えちゃってカヤブキ様も大変だよねぇ

 会話が途切れるのを待っていたかのように、すっと襖が開く。
お待たせして申し訳ありませんでした
着替え、おわりましたー
主様、いかがでしょうか

 いい。これはとてもいいな。

 澪とは違って腹掛けを着けていないから胸の谷間がしっかり見えている。

 当然、そこには葵の名前の由来にもなっている葵色に輝く勾玉が存在していた。

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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