第64話1 横になっていた澪の体がもぞもぞしている

文字数 523文字

 横になっていた澪の体がもぞもぞしている。

ん、んんぅ……
 お椀を置いた紅寿は澪の枕元に座って様子を伺っている。
なんかいい匂いがする……
体調が戻られたのでしたらアワブチ様もいかがですか
ん~。そうだね。私もいただこうかな

 紅寿はかいがいしくお椀と箸を澪の前に用意していた。

 両手を目の前で合わせてから澪はお椀を手に取る。

ん……おいしい
よかったです。

このまま食材を使わずにおくのももったいなかったですからね

そうだな。このあたりだと米はかなり貴重だし。

ありがたくいただいておこう

そうなの? 

澪の領地はお酒を造ってるって聞いてたからお米がたくさんとれるのかと思ってた

姉貴のところは領地だけは広いけど米はあんまりとれないんだよな。

ほとんどが山で、あとは沼地みたいな場所だし。そのくせ領民が多いからさ

冬を越してやっと今年の作付けだったんだけどね。

収穫があるまでは蓄えておいた食料でやりくりしないといけなかったんだけど仕方ないよ。だから全部食べちゃって

遠慮なくもらってるさ。ずずっ
 不動は傾けていたお椀から口を離して床に置く。
領民が大事にしてた食料を食ったんだ。それを食った以上は俺たちが領民を守らなきゃな。それが侍ってもんだ。

だから俺は絶対に機巧操士になるぜ!

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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