第14話2

文字数 683文字

わかりました。よく知らせてくれましたね。

息子にかわってお礼を言わせてください。ありがとう

いえ。私にはこれぐらいしかできませんから
たしかに貴方はまだ機巧操士ではありませんが、稀有な癒しの力を持っている。

そしてその力を使って仲間の命を救った。その事実はかわりません。

此度、ソウゲンは貴方を戦場に連れていくという正しい選択をした。ただそれだけです

……はい
ところで、北からも敵の侵入があったという話ですが
はい。そちらについてなのですが、こちらのフブキ・キヨマサ様と葵の君が三桜村を荒らした三旗の敵機巧武者を撃退してくださったとのことです
ほう……それはそれは
 こちらを見る表情は澪と会話していたときと全く変わらない。だというのに背筋が寒くなった。
初めまして。不吹清正と申します
そう言えば私も名乗っておりませんでしたね。

フジカワ家家臣のヒロハタ・ゲンサイと申します。

この操心館の館長をしております

 広幡さんは葵をじっと見つめる。
そちらがフブキ様の連れ合いの機巧姫ですか
はい。葵と申します
見事な機巧姫です。国王様がご覧になればさぞや興味を持たれるでしょうな。

さて、単旗で機巧武者を三旗も倒したとのことですが――

 心なしか葵の気配も変わった気がする。澪が息を飲んだのがわかった。
――敵の動きをどう思われました
動きですか?
アワブチさんの報告を聞いて疑問に思ったのです。

五旗を相手に三旗の我が方がその程度の被害で敵を撃退できたというのは考えにくい。

無論、一所懸命で戦ったからこそ勝利したのだと思いますが、本来、数は力ですからね

 同様に僕が三体を倒したことも信じがたいと言いたいのだろう。
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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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