第50話5

文字数 581文字

それより僕たちのいる場所は紅寿が見つけてくれたんでしょ? 

流石だね

 人狼なら鼻が利くだろうと思ってお願いをしたんだけど、その判断は間違っていなかったようだ。
……
 褒めたのに、どうして紅寿はそんな顔で僕を見ているんですかね?
ねー。キヨマサ君ってひどいよね。

女の子の気持ちなんてこれっぽっちも理解してくれないんだから

あ、二人だけで内緒の会話しないでよ!
内緒の会話なんてしてませーん。

ねー、コウジュ

 紅寿はコクコクと頷いている。

 くそう、〈友愛の声〉を使って二人きりで会話してるじゃないか!

それより兄貴。これからどうする。

そろそろ操心館に戻るか?

 中伊さんの後をつけてもらった翠寿はまだ戻ってきていない。

 僕たちの匂いを辿って合流してくれるとは思うんだけど。

せっかくだからみんなでご飯を食べていこう。

澪たちも一緒にどう?

 誘ったのに澪はジト目で僕を見るだけだ。

 おまけに、これ見よがしにヒソヒソと紅寿と話し合う。

いい、ああいうのをご機嫌取りっていうの。

絶対に引っかかったらダメだからね

別にいいけどさ。頼みを聞いてくれたお礼に二人の食事代も出そうと思ってたのに。

今日は紅寿もいるからお酒もちょっぴりぐらいはいいかなーと思ってたのに残念だ。

仕方がないから不動と二人きりで飲みに行こうかな

あっ、ずるい! 

私たちも連れて行ってよ!

 澪を食事に連れ出すのは実に簡単なことだった。
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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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