第52話5
文字数 848文字
僕に聞かれてもわからない。
病院があるのならそこに入院しているのかもしれないけど、この世界の医療施設がそこまで発達しているとも思えないし。
勾玉を削る時にできた欠片で作られた簪か。
それを見た澪たちが綺麗だって騒いでいたな。
褒めると翠寿がにっこりと笑う。可愛かったので頭を撫でてあげた。
紀美野さんはおらず、簪だけが家に残されていて、中伊さんが一人泣いている。
さて、ここから導かれる答えは何だろう。
その気持ちはわかる。澪の性格ならそう言い出すのも納得できる。
でも、きっと今はそのタイミングじゃない。
表通りに面したお店側を見張っている人がいて、裏口側には侵入者を感知するための結界が張られている。
このことが意味するのは何か。
多分、他にも仲間がいると思うからそいつらにも見つからないようにね。
監視役が交代するようだったら追跡してねぐらを見つけてもらえると助かる。
日が暮れても特に動きがないようなら操心館に戻っていいよ。
繰り返すけど絶対に見つかったら駄目だからね
ふっと翠寿の姿が消える。
音もなく跳躍すると塀を伝って屋根へ飛び移り、あっという間に姿が見えなくなった。