第60話3
文字数 463文字
つまり鶯色の機巧武者は槍の柄を地面に見立てているのか。
鶯色が一歩踏み出しながらクルリと前転したと思ったら足元にあった槍が消えている。
次の瞬間には手の内に槍が握られている。
刀で受けようにも間に合わない。
脳天に槍が振り下ろされた。
槍の柄が兜に当たる。
目に火花が散る。
回転の勢いが加わった一撃だ。
前立てが砕け、兜が軋むような嫌な音を立てた。
頭部に加えられた衝撃は首から背骨を伝い両足にまで達する。
雷に打たれたみたいで全身に力が入らない。
今度は腹部に衝撃。足刀がめり込んでいた。
わずかな時間の浮遊感の後、背中から地面に落ちる。
そこにあった炭焼き小屋を破壊してしまう。近くに積み上げられていた薪が散らばりガラガラと音を立てていた。
目の前が真っ暗だった。何も見えない。
苦しい。呼吸ができない。
手足が重い。もう立てそうにない。
駄目だ。もうダメだ。