第1話3
文字数 1,053文字
なんと言ったのですか?
貴方は必ずやこの戦を生き延びることができますし、勝利します。
何故ならば――
私はありのまま、事実を口にしているだけです
拗ねて、ぷぅっと頬を膨らませている様が見えるようでおかしかった。
彼女は作り物であるはずなのに存外表情が豊かだ。下手をすると少し前の澪よりも。
正しく矢を放つには呼吸を整えなければいけない。
先ほどの会話が澪の緊張をほぐすための戯れ言だったのだとようやく思い至る。
いや、水縹ならばあれが本心であったとしてもおかしくないのだが。
しかし結果的にとはいえ澪の気持ちが落ち着いたのだから助言であったと思うことにしておいた。
その方がなんというか心が穏やかでいられそうだ。
再び深呼吸をして、己の気持ちを丹田に収める。
落ち着いた。問題はない。
そう自分に言い聞かせる。
再び弓をつがえる。
初めて実戦で操る機巧武者だが、まるで自分の身体のように動く。
水縹も澪を受け入れてくれている。大丈夫。やれている。
視界はいつもよりかなり高くなっているためにその調整は必要だが、今のところ大きな問題はなかった。
射る――命中。
再び味方から歓声が上がった。
ミオにはたくさん活躍をしてもらうのでそのつもりでいてください
この戦が始まる前、敵の機巧武者はこちらの五倍以上と斥候からの報告があった。
事実、眼下にはかなりの数の機巧武者がいる。小国を攻め落とすにはいささか大げさに過ぎる数だった。
兵法に五倍の兵力があればこれを攻めよという言葉がある。
澪たちは簡易的な陣を丘の上に構築して迎え撃っているとはいえ、このままでは数に任せて押し切られるのは必定だった。