第7話3

文字数 644文字

……夢じゃないとして、じゃあ、これからどうしたらいいの?
主様の好きなようになさればよろしいかと。

どこまでも吾はお付き合いいたします

 そう言われてもなあ。

 目的もなく動き回るのはできれば避けたい。

 何事も計画を立ててから実行し、その結果を検証するべきだ。

あー、考えてみたら、好きなようにしていいって言われるのって久しぶりかも。

仕事だと何かしら制限があったもんな

 自由にゲームを作れることはまずない。何かしら制限が必ずあるからだ。

 それは予算であったり、スケジュールであったり、スタッフであったりする。

 予算が限られていれば工数がかかる企画は難しいし、短期間で形にしなければならない場合だとシステムを新規に用意せずにありものに手を加えて利用することもある。

 それを夢がないと言ってしまってはおしまいだ。

 だからゲームクリエイターは制限のある中で最良を目指してゲーム作りをする。

でもまあ、夢みたいな話だよ。

こんな世界にやってこられるなんてさ

 自分が作ったゲームの世界に入り込み、キャラクターと会話ができるなんてクリエイター冥利に尽きると言うものだ。

 ここで見たり聞いたり体験したことを現実のゲームに落とし込んでみたい。

 そして僕がこの世界で楽しいと感じたことを、ゲームを通じてプレイヤーにも体験してもらいたい。


 クリエイター魂が激しく刺激されている。

 妥協と惰性に流されて感性が摩耗していくばかりだと思っていた。

 でも自分の中にちゃんと残っていたんだな。この熱い気持ちはこれからも大切にしたい。

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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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