第9話4
文字数 669文字
澪に先導してもらいながら道なき道を進んでいく。
動きにくそうな袴姿の葵は平気な顔をして森の中を歩いているけど、僕はギリギリだ。合わない靴で山道を進むのは思っていた以上に体力を消耗する。
澪が手渡してくれたのは竹の水筒だった。
栓を開けて口を湿らすようにゆっくり飲む。
こんなに水が美味いと感じたのはいつ以来だろう。
体を動かさなくなって久しいからなあ。
さらに二口ほど水を飲む。
飲み干すわけにはいかない。澪たちが飲む分だって必要だ。
もしかして移動の手間を省くためのシステム? それが事実なら助かる。
ゲームではそういう設定はなかった。
ソーシャルゲームの場合は、町の移動、国家間の移動、果ては大陸の移動まで、すべてマップを選択するだけで済むし。
便利になっているのなら歓迎すべきだ。この設定を追加した世界に感謝したい。
無理に聞いて後から面倒事に巻き込まれるのもなんだし、ここは見て見ぬフリをしておくのが得策だ。
この先、必要に応じて教えてくれることになるかもしれないんだし。