32、ハンニバル・バルカという名前(2)
文字数 1,165文字
メソポタミア北部からシリア、パレスチナにかけて信仰されていた天候神アダドはウガリットではバアルと同一視されていた。ウガリットは地中海東岸にあった都市国家で紀元前1450年頃から紀元前1200年頃に全盛期を迎えた。独自の表音文字ウガリット文字を持ち、ウガリット神話が残っている。ウガリット神話の中でバアルは重要な神であった。
神ではなく聖人にちなんだ名前であるが、余の父上サンチョ・ラミレス王はローマへ巡礼に行き、その時に聖ペトロの家臣になると誓い、長男、つまり余の1番上の兄上にペドロという名前をつけた。アラゴン3代目の王ペドロ1世だ。
父上は篤い信仰心を持っていた。ローマ式の儀式を教会に取り入れ、各地に教会と修道院を作った。アラゴン王国の基礎を作ったのは父上である。父上はペドロ兄上をアラゴン王、アルフォンソ兄上を軍隊の指揮官、余をキリスト教会のトップにして、理想の国を作ろうとしたのであろう。歴史は皮肉でペドロ兄上とアルフォンソ兄上が後継者を残さずに亡くなり、余が王位を継ぐことになった。
神や聖人にちなんだ名前を子に付けるというのは、強い信仰心があったからこそであろう。名前を呼ぶたびに神の名前を唱えるのと同じ効果があるのだから。他にもバール神にちなんだ名前の者はフェニキア人には多い。ハンニバルの名前に使われているフェニキア文字はしっかり覚えておくとこれからの学習に役に立つ。