51、ポエニ戦争(26)

文字数 1,887文字

アゲル・フレルヌスの戦いがいよいよ始まります。作品集には下の画像から入って下さい。
アゲル・フレルヌスの戦いは紀元217年の夏、カリキュラ山での戦いである。それぞれの指揮官はカルタゴがハンニバル、ローマがクィントゥス・ファビウス・マクシムスで、戦力はカルタゴが歩兵2,000、雄牛2,000、非戦闘員2,000で、ローマは分遺隊4,000及び予備兵で結果カルタゴの損害は軽微であったがローマは1,000以上であった。
雄牛2,000というのも戦力に数えるのですか?
略奪した雄牛を戦いに使うなんてハンニバルは卑怯です。
規定の時刻にカルタゴ兵は起き、可能な限り静かに行軍を開始した。一方雄牛部隊は鞍部に向かい、斜面に差し掛かったところで角に結び付けていた薪に火がつけられた。雄牛は恐怖に駆られ、狂ったように鞍部の斜面を駆け上がり、数千の松明が山際を動き回った。この灯りと騒音はファビウスのローマ本軍と峠を守る分遺隊双方の注意を引いたが、両者の反応は異なっていた。
ハンニバルは雄牛を使ってローマ軍を混乱させ、包囲網を突破しようとしたのか。
彼の部下とミヌシウスが促したにもかかわらずファビウスは陣地を離れなかった。兵士は武装し出動準備ができていたが結局は動かなかった。ファビウスは野戦を行うつもりはなかった。平坦でない場所での戦闘では、ローマ歩兵はその強みを失い、戦列が崩されてしまう可能性があり、また連絡網も妨害されることを恐れたためである。ハンニバルはトレビアとトラシメヌス湖畔の戦いの双方において策略によりローマ軍を打ち破っていたため、ファビウスは自分の軍がその二の舞になるのを恐れた。このため、ローマ軍は面子を失いはしたものの、軍自体を失ってしまうことはなかった。
さすがファビウス、ローマ軍の強みと弱点、ハンニバルの策略などをよくわかっていて、安易に動き出したりはしない。
峠に布陣していたローマ分遺隊には、ファビウスのように引き止めるものがいなかった。カルタゴ本軍が攻撃をかけてきたものと信じ、その攻撃のために持ち場を離れた。ローマ軍が峠の持ち場を離れると、ハンニバルの本軍はアフリカ歩兵を先頭に騎兵、輸送部隊、家畜の順に野営地を出発し、ケルト歩兵とイベリア歩兵が後衛となってこれを守ったファビウスが攻撃を仕掛けてこなかったため、カルタゴ軍は妨害されることなく峠を通過した。
ローマ軍は雄牛が走るのに騙されて持ち場を離れ、その間にカルタゴ軍が峠を通過してしまったのですね。
鞍部に向かったローマ軍は、その灯りの正体を知って驚愕した。雄牛が暴れまわりローマ軍の戦列を崩し、カルタゴの槍兵が待ち伏せしており、大混乱が発生した。夜が明けるとイベリア歩兵が鞍部の斜面を登ってこの混乱に加わってきた。イベリア人は山岳戦闘の達人であり、ローマ軍を蹴散らして1,000人以上を殺し、ローマ軍が反撃して来る前に非戦闘員、槍兵、そしていくらかの雄牛を救出した。

 

こんなムチャクチャな作戦に使われた雄牛がかわいそうです。
ハンニバルは天才だ!誰も思いつかないような作戦を次々と考え出している。
まさかこの作戦のために雄牛2,000頭を略奪したというわけではないですよね。
もちろんそうだ。略奪は調達とは違う。作戦に必要だから雄牛を2,000頭集めたというわけではなく、近隣の村から手あたり次第略奪した結果家畜もたくさん集まったに違いない。
これは僕の考えですが、ハンニバルが直接ローマに侵攻しないで南へ向かったのは、略奪するためでした。アルプス越えと戦いで疲れた軍隊に休息と食料を与え、さらに士気を高めるためにもきっと略奪が必要だったのです。カルタゴ軍はヌミディア人、イベリア人、そして後から加わったガリア人などの混合部隊です。彼らがローマを攻撃するためにははっきりとした目的が必要です。イタリア南部へ行き、豊かな土地で食料と家畜を手に入れれば、ローマを倒した後、このような豊かな土地が手に入るという目的が生まれました。
ローマを倒した後で得られる利益を目に見える形で見せるためにも、南へ行っての略奪が必要だったというわけか。第1回十字軍の時と同じだ。教皇はエルサレムに行けば豊かな土地が手に入ると約束し、人々は熱狂した。
教皇の言葉ならキリスト教徒は皆信じて熱狂します。でもハンニバルは混合部隊のカルタゴ軍を熱狂させ士気を高めるためにも略奪が必要で、さらにこのアゲル・フレルヌスの戦いはカルタゴ軍を喜ばせたと思います。牛を使ってローマ軍を混乱させ包囲網を突破したのですから。ハンニバルは本当に天才だと思いました。
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