91、ヘブライ文字と発音記号(6)
文字数 1,224文字
色々な理由があると思うが、ヘブライ文字のテットはフェニキア文字のテット、車輪の形とは似ても似つかないものになってしまっている。まるで余と父上のようだ。偉大な皇帝と言われた父上カール4世は完璧な車輪で治世もうまくいっていた。だが余はヘブライ文字の車輪と同じ、いくら頑張ってもうまく回ることができず、統治に失敗し、ローマ王の地位も名誉も失ってしまった。
偉大な皇帝の長男として生まれながら人生を失敗しているのは余も同じだ。今ならよくわかる。余もヘブライ文字のテットと同じで角ばっていてうまく回ることができない。父上と同じようにできないという焦りや不満を持つ中、教皇にそそのかされて反乱を起こしてしまった。
文字は多くの人が覚えてしまえば、元の形を想像できない方が望ましい。フェニキア文字もヘブライ文字も表音文字、音を伝える役割を持っているのだから、特定の文字がその元の形を想像しやすければその文字だけが見た時に主張が強くなり印象に残ってしまう。文字は記号として同じように見えた方がいい。
ヘブライ文字はみんな同じように見えるからこそ記号としての文字の役割を完璧に果たし、聖書のような長い物語の音を写し取り、後世に伝えることができた。ヘブライ文字がなければ、聖書もまた作られなかったであろう。