4、カルタゴ建国の伝説

文字数 1,338文字

フェニキア人の都市ティルスはアッシリアに支配されてからは衰えてきたが、紀元前9世紀にティルスの植民都市とし建設されたカルタゴはその後も繁栄を続け、フェニキア人の拠点となった。
作品集には下の画像から入ってください。
これはジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナーの描いた『カルタゴを建設するディド』です。ターナーは『アエネーイス』のアイネイアースとディドの物語が大好きで、この話を基にした絵をいくつも描いています。
カルタゴの建国神話ではディドは国王の娘で幼名はエリッサといった。父の弟でメルカルトの神官をしていたシュカイオスと結ばれて同じく巫女として仕えていた。父の死後彼女と兄のピュグマリオーンが共同で国を治めるように遺言された。ところが兄は王位の独占と叔父の財産目当てに遺言を違えてシュカイオスを暗殺し、ディドの命もねらった。
こんなに昔から王位をめぐる争いがあったのですね。王の弟が神官になったというのもラミロ2世が修道士となったのとよく似ている。
余の母上はハンガリー王妃だったころ、王の弟に王位を簒奪されて幼い我が子を連れオーストリアに亡命した。普通は邪悪な叔父が王位を簒奪するという話が多いが、これは逆のようだ。
ディドは家臣たちと一緒に航海に出て現在の北アフリカ・チェニジアの地に辿り着いた。彼女はこの地の王であるイアルバースに土地の分与を申し入れた。イアルバースは1頭の牝牛の皮が覆えるだけの土地であれば分与してもよいと応え、彼女は牝牛1頭分の皮を細かく引き裂いてビュルサの丘の土地を取り囲み、砦を築くだけの土地を得た。
ここでは牝牛だけどやっぱり牛が出てきますね。
古代ギリシャの歴史家ティーマイオスによれば、これを見たイアルバースは彼女の才能に惚れて求婚した。だが、亡き夫の死の際に決して再婚しないと誓っていた彼女はこれを拒んで火葬の炎の中に飛び込んで自らの命を絶ったという。
壮絶な話ですね。
古代ローマの詩人ウェルギリウス作の叙事詩『アエネーイス』にはこれとは違う物語が書かれている。英雄アイネイアースは祖国トロイア滅亡後に仲間とともに流浪の末に漂着する。そこで彼は女王として国を治めているディドに歓待を受ける。
アイネイアースの母ウェヌス(アプロディーテー)は彼の身に危険が及ぶことを恐れ、クピードー(エロース)に命じてディドに彼に対する愛を吹き込まさせる。そして2人は愛し合うようになり契りを結ぶ。
ところがアイネイアースにイタリア半島に向かうように神託を下していたユーピテル(ゼウス)は改めてメルクリウス(ヘルメース)に命じて信託の実行を促した。
そこで彼はイタリア行きを決意して出発してしまう。アイネイアースに裏切られたディドは悲嘆の余り、火葬の炎に身を焼かれて命を絶ったという。
ディドもアイネイアースも結局本人の意志というよりも神々の都合に振り回されていますね。
余にとってギリシャ神話のこういう話は全く好きではない!神が人間の恋愛に口出ししていいのか!女王ならば男に振られたぐらいで自殺しないで、しっかり国を守らなければいけないだろう!
ええまあそうですけど、この話はターナーなど芸術家には大人気のようです。
伝説の話が長くなってしまったが、次回からは歴史の話をしよう。
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