4、カルタゴ建国の伝説
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カルタゴの建国神話ではディドは国王の娘で幼名はエリッサといった。父の弟でメルカルトの神官をしていたシュカイオスと結ばれて同じく巫女として仕えていた。父の死後彼女と兄のピュグマリオーンが共同で国を治めるように遺言された。ところが兄は王位の独占と叔父の財産目当てに遺言を違えてシュカイオスを暗殺し、ディドの命もねらった。
ディドは家臣たちと一緒に航海に出て現在の北アフリカ・チェニジアの地に辿り着いた。彼女はこの地の王であるイアルバースに土地の分与を申し入れた。イアルバースは1頭の牝牛の皮が覆えるだけの土地であれば分与してもよいと応え、彼女は牝牛1頭分の皮を細かく引き裂いてビュルサの丘の土地を取り囲み、砦を築くだけの土地を得た。
古代ギリシャの歴史家ティーマイオスによれば、これを見たイアルバースは彼女の才能に惚れて求婚した。だが、亡き夫の死の際に決して再婚しないと誓っていた彼女はこれを拒んで火葬の炎の中に飛び込んで自らの命を絶ったという。
古代ローマの詩人ウェルギリウス作の叙事詩『アエネーイス』にはこれとは違う物語が書かれている。英雄アイネイアースは祖国トロイア滅亡後に仲間とともに流浪の末に漂着する。そこで彼は女王として国を治めているディドに歓待を受ける。