44、カルタゴという地名(2)

文字数 1,344文字

カルタゴという地名についての続きです。作品集には下の画像から入ってください。
これはターナーの『カルタゴを建設するディド』というタイトルの絵です。



前回話をしたように、「カルタゴ」の名前はフェニキア語のカルト・ハダシュト(Qart hadast、新しい町)に由来する。
使われているのはコフ(針穴、q)、レシュ(頭、r)、タウ(印、t)、ヘト(柵、h)、ダレト(扉、d)、シン(歯、s)、テト(車輪、t)の7文字が使われている。
すみません、ここで私の間違いを訂正します。ヘトの文字の意味、棚(たな)と思い込んでいましたが、よく見たら柵(さく)でした。
何を間違えている、と文句を言いたいところだが、ここにいる者はみな漢字や日本語はよくわからないでいるから間違いに気付かなかった。
わかりました。では今回からはヘトの文字を棚(たな)ではなく柵(さく)でイメージします。
では改めてカルト・ハダシュト、フェニキア文字の7文字で何をイメージする?
最初の3文字はコフ(針穴)、レシュ(頭)、タウ(印)の3文字はたくさんの船が海に出て交易を行うイメージです。船はコフ(針穴)の糸によって結ばれ、その中にレシュ(頭)となるリーダーがいて、それぞれの場所で商売をしてタウ(印)を押します。
なるほど、なかなかうまいではないか。
後の4文字はヘト(柵)、ダレト(扉)、シン(歯)、テト(車輪)です。これは新しい町を建設するイメージです。広い場所で自分の土地と他人の土地を区別するためにはヘト(柵)が必要で、家を作ればダレト(扉)をつけます。時にはシン(歯)を食いしばらなければいけないような辛い仕事もありますが、テト(車輪)を使って木材や石などを運び、町は少しずつできていきます。
作者が間違えたヘトを棚(たな)ではなく柵(さく)とうまく訂正しているのか。
僕は商人の子です。何か間違いや不都合なことがあっても、それをうまく変える方法がないか考えます。
私にも言わせてくれ。神の道を進むのはコフ(針穴)を通るよりも難しいから、しっかりとしたレシュ(頭)の下で修業を行い、タウ(印)を結ばなければいけない。自分と他人との間にヘト(柵)を置いて常に境界線を作りながら、それでもダレト(扉)を開けて他人と交流しなければいけない。修行は長く続き、ついにはシン(歯)を失い、いくつもの季節が過ぎ、テト(車輪)は回り続ける。
ニコラさん、それはカルタゴとどういう関係があるのですか?
特に関係はない。私が日頃思っていることを述べたまでだ。
よくわからないけど、なんか修道士の人はすごいですよね。
余も修道士だった。王として生きたのは3年だけ、それ以外の人生はすべて修道士だった。
修道士の生活は退屈ではないか?
そんなことはない。生まれ変わってもやっぱり修道士として生きたいと願った。ただの修道士ではない。騎士の修行もして戦闘能力も高い修道士になりたかった。
ニコラさんのようにですか?
そうかもしれない。
カルト・ハダシュト、新しい町を意味するフェニキア文字、コフ(針穴)、レシュ(頭)、タウ(印)、ヘト(柵)、ダレト(扉)、シン(歯)、テト(車輪)の7文字は広い海と大地、悠久の時の流れとそこに生きる人間の小ささ、命の短さを表現しているようにも思える。
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