61、ポエニ戦争(31)

文字数 1,766文字

ゲロニウムの戦いの続きです。作品集には下の画像から入ってください。
ローマ軍の動きに合わせ、カルタゴ軍は数日の間調達部隊の人数を減らし、ローマ軍野営地近くの自軍野営地を強化し戦闘に備えた。しかしながらミヌキウスはファビウスを見習うかのように野営地にこもっていた。
ミヌキウス、どうした?せっかくのチャンスじゃないか!
このためハンニバルはジレンマを抱えることとなった。即ち、既存の補給物資に頼って滞陣を続けるか(やがては物質不足が生じる)、調達部隊を再び増強して長期滞陣に備えるか、である。結局ハンニバルは調達部隊の増強を選んだが、ローマ軍はこの機会を捉え、野営地の後門から軽歩兵と騎兵を出撃させ、ゲロニウム周辺各地に散らばっていたカルタゴ軍調達部隊の多くを殺傷した。
戦争はただ戦うだけでなく食料調達のことも考えなければいけないから大変です。
他方、ミヌキウスが率いる歩兵は、カルタゴ軍臨時野営地に対峙していた。調達部隊を攻撃され、臨時野営地も攻撃の危険にさらされることになったが、ハンニバルはローマ軍に対する急襲部隊を率いて出撃した。
野営地や食料も守らなければならないから、全軍で戦うわけにはいかない。それがハンニバルにとってつらいところだ。
ハンニバルの兵力は全軍の1/3に過ぎず、騎兵は殆どなく、兵力に劣るカルタゴ軍は望まない戦闘を戦うこととなった。最初のカルタゴ軍の猛攻撃によりローマ軍は震撼したが、歩兵8,000と騎兵500を率いたルキウス・デキムスの援軍がカルタゴ軍背後に現れたため、最終的には優勢を得た。ルキウスの軍勢はファビウスが送ったものであった。
ファビウスはローマに引っ込んだのではないのか。なぜここで援軍を送ってきた?
そこがファビウスの賢いところです。自分がいなくなった後、ミヌキウスが勝手に動き出すとわかっていたのでしょう。だからルキウスの援軍を送ったのでしょう。
そんなことをしたらミヌキウスに手柄を独り占めされるではないか。
ファビウスにとって大切なのは自分が手柄を得ることではありません。ローマを守ることを彼は第一に考えたのでしょう。
カルタゴ軍は退却を開始し、ローマ軍は追撃にあたって野営地を引き払うことも考慮した。しかしハスドルバルが調達部隊の兵4,000を率いて到着し、ローマ軍の優位性がやや失われたため、ミヌキウスは引き上げを命じた。
結局この時はローマとカルタゴの両方に援軍が来たことになりますね。
でもまだゲロニウムの戦いの本格的な戦闘は始まっていないのだろう。ああじれったい。
カルタゴ軍の損害は6,000、ローマ軍の損害は5,000と言われている。ローマ軍はカルタゴ軍が不利な状況に陥るように強いて、多大な損害を与えた。この戦闘は、イタリア半島での作戦中にハンニバルが唯一退却した例であった。
唯一ということは、他の時には退却してないということですね。
この敗北により、ハンニバルは戦術的な点から自身の滞陣位置を再考せざるを得なくなった。ローマ軍の兵力はカルタゴ軍を上回り、カルタゴ軍野営地はゲロニウムと臨時野営地の2つに分かれていたのに対して、ローマ軍は集中していた。カルタゴ軍が調達部隊を出すと、ミヌキウスはそれに対する嫌がらせ攻撃をかけることができた。
戦争は本格的な戦闘だけでなく食料調達などの駆け引きも重要になってきますね。
臨時野営地に留まり続けるにしても小競り合いは継続し、それぞれの結果がどうであれ、援軍が期待できないカルタゴ軍にとって消耗戦は最悪の選択であった。加えて、ローマ軍がゲロニウム自体に攻撃をかける可能性もあったが、そうなれば補給物質を全て失ってしまう。結局、ハンニバルは全軍をゲロニウムの野営地に引き上げさせた。ミヌキウスは放棄された自軍近くのカルタゴ軍野営地を直ちに占領した。
この状況はミヌキウスのローマ軍が有利に立っていると考えていいのですか?
そうだろう。ファビウスは何もできなかったが、ミヌキウスが指揮を執るようになってやっと動きが出てきた。
でもミヌキウスはファビウスが送ってくれた援軍に助けられています。
それでもとにかく動きが出た。きっとローマの市民はファビウスではなくミヌキウスを賞賛するであろう。
ペドロ2世の言う通り、ミヌキウスはローマの元老院から賞賛されることになります。
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