61、ポエニ戦争(31)
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このためハンニバルはジレンマを抱えることとなった。即ち、既存の補給物資に頼って滞陣を続けるか(やがては物質不足が生じる)、調達部隊を再び増強して長期滞陣に備えるか、である。結局ハンニバルは調達部隊の増強を選んだが、ローマ軍はこの機会を捉え、野営地の後門から軽歩兵と騎兵を出撃させ、ゲロニウム周辺各地に散らばっていたカルタゴ軍調達部隊の多くを殺傷した。
ハンニバルの兵力は全軍の1/3に過ぎず、騎兵は殆どなく、兵力に劣るカルタゴ軍は望まない戦闘を戦うこととなった。最初のカルタゴ軍の猛攻撃によりローマ軍は震撼したが、歩兵8,000と騎兵500を率いたルキウス・デキムスの援軍がカルタゴ軍背後に現れたため、最終的には優勢を得た。ルキウスの軍勢はファビウスが送ったものであった。
カルタゴ軍は退却を開始し、ローマ軍は追撃にあたって野営地を引き払うことも考慮した。しかしハスドルバルが調達部隊の兵4,000を率いて到着し、ローマ軍の優位性がやや失われたため、ミヌキウスは引き上げを命じた。
カルタゴ軍の損害は6,000、ローマ軍の損害は5,000と言われている。ローマ軍はカルタゴ軍が不利な状況に陥るように強いて、多大な損害を与えた。この戦闘は、イタリア半島での作戦中にハンニバルが唯一退却した例であった。
この敗北により、ハンニバルは戦術的な点から自身の滞陣位置を再考せざるを得なくなった。ローマ軍の兵力はカルタゴ軍を上回り、カルタゴ軍野営地はゲロニウムと臨時野営地の2つに分かれていたのに対して、ローマ軍は集中していた。カルタゴ軍が調達部隊を出すと、ミヌキウスはそれに対する嫌がらせ攻撃をかけることができた。
臨時野営地に留まり続けるにしても小競り合いは継続し、それぞれの結果がどうであれ、援軍が期待できないカルタゴ軍にとって消耗戦は最悪の選択であった。加えて、ローマ軍がゲロニウム自体に攻撃をかける可能性もあったが、そうなれば補給物質を全て失ってしまう。結局、ハンニバルは全軍をゲロニウムの野営地に引き上げさせた。ミヌキウスは放棄された自軍近くのカルタゴ軍野営地を直ちに占領した。