映画「関心領域」(2024.5.25)

文字数 765文字

 とても平和な家族が暮らす壁の向こうはアウシュビッツ収容所。

 ドイツ司令官の一家は温室やプールまでついた家で満たされて暮らしているように見えるが、外からは銃声や叫び声が常に聞こえる。そして、ユダヤ人を焼く煙りも見える。

 アウシュビッツ内での出来事は何も描かないことで、どんよりとした心の重さと異常さが逃げることなく積み重なり、どうしようもない闇を包まれる。すぐ「そこ」で大量虐殺が行われているにも関わらず、司令官である父親の誕生日を祝い、プールではしゃぐ。どうかしている、と思うのだが、徐々に麻痺してしまうのだろうか。あるいは「聞こえない」ようにする術を見つけるのだろうか。何事もないように、という言葉がぴったりと当てはまる彼らの異常さは「無関心」が高まった現代にも通じるとも思えるのだ。観ていて、だんだん怖くなってくる。そして、観終えた後も怖い気持ちがしばらく残る。

 子供たちは、やはり影響を受けているはずで、その後の人生にどのような影響を与えたかについては、非常に気になる。彼らは何も知らないのか? 知っていたとしても、理解できていないのか? 後で「真実」を知ったときに、一気に記憶が蘇るのかもしれない。

 この映画は、とにかく音響が凄い。素晴らしいというよりも、凄い。音だけでも恐ろしさが感じられる。是非とも映画館で観るべきだと思う。


(怒りの追記)内容を知らずに観に来たのか、音響の凄さを知らずに観に来たのか、最初から最後までポップコーンを咀嚼していたバカップルが近くにいて、音響の邪魔だった。良くもまぁ、100分も食べ続けられるものだと呆れてしまう。内容的にポップコーンを食べる映画ではないでしょ。ましてや、音響が評価されている映画なのだから、他の客の静かさに気づいて欲しかった。二人で家で観とけよ、とみんな思っていたはず。
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