『紙婚式』山本文緒(角川文庫)(2023.4.4)

文字数 322文字

 様々な結婚のカタチというか、男と女の関係性を描いている短編集なのだが、面白いというよりも読みながら怖いと思ってしまった。それはないだろう、と思うような設定でも、途中でないようであるかもしれないな、と思い込ませるのは山本文緒のストーリーテラーとしての才なのだろう。

 僕がいちばん印象に残ったのは「バツイチ」かな。最初は、クールな男女の恋愛話なのに、次第に過去が描かれ、この先どうなるのだろう? と思い切り感情移入してしまった。話が進めば進むほど重い内容で、僕自身の人生とは重なり合わないはずなのに、なぜだか分かると思ってしまう説得力がある。事細かに描くのではなく、点をポン、ポンと散らすことで余白だったり、余韻に読者は惹きこまれるのだ、きっと。
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