待ち合わせ(2022.12.11)

文字数 643文字

 海外在住の友人が久しぶりに帰国し、メールのやり取りで食事の約束をした。

 ところが、時間になっても一向に現れない。僕の携帯番号とアドレスは教えていたけれど、いつまで待っても連絡はなく、僕は彼の携帯番号が分からないから、大いに焦った。30分後に、待ち合わせ場所を読み間違いしていたと、彼が現われた時は待ちくたびれてげんなりしてしまった。お互いに、何かあったのだろうか? どうしたのだろうか? と思いながら、お互いの姿が見えない近くで待ちわびていたのだから、今となれば笑い話だが、その時は予約した店に連絡したり、あたふたしてしまった。

 携帯もメールもなかった大学時代、改札で待ち合わせて、待てど暮らせど現れない友人にメッセージボードへ「先に店へ行く」」と書いたことを思い出す。メッセージボードがあれば……と一瞬思った。もちろん、彼が待てど暮らせど現れなかった友人ではない。

 時々、妻と話すのだが、東京で暮らし始めた新婚の頃、僕が北海道に出張した際に、札幌駅で金曜日の夜に待ち合わせて週末に北海道旅行したことがある。方向音痴の妻が、東京から一人飛行機に乗り、連絡手段もない中で札幌駅の待ち合わせ場所まで現れたのは奇跡としか言いようがない。

 携帯やメールに慣れたオジサンは、あの頃の不便をすっかりと忘れてしまった。昔だったら、周りをうろちょろして相手を探しただろうに、メールに書いたのだから間違いようがないと思い込んで、30分も時間を無駄にしたのだから、人間として劣化していると恥ずかしく思う。
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