机上の山(2023.6.29)

文字数 576文字

 机に積み上げられた本の山。いつ崩れても不思議でないのに、絶妙な均衡を保ち、僕に読まれる時をじっと待ち続けている。しばらく忙しかったから、本を開くこともなかったのだが、ついに行き詰まり、開き直って山の頂に手を伸ばす。
 整体について書かれた文庫本だ。
 腰痛持ちなので、書店で衝動買いしたものの、買ったことすら忘れていた。整体のハウツー本ではなく、効用について論理的に書かれた読み物である。「はじめに」を読み始めて、精神論でもあることが分かり、姿勢を正す。整体についてまだ何一つ学んでいないのに、自然と背骨を伸ばすのだから、今後の展開に期待が持てそうだ。
 
 久しぶりに豆から挽いてみようか。

 忙しいが口癖となり、最近はインスタントばかりだった。忙しいとは、心を亡くすこと。以前に受講したビジネスセミナーで講師が話していたことを思い出す。その時は何とも思わなかったけれど、実際に追い込まれてみると良く理解できる。

 読書は時間がある時に楽しむもの、と思っていたが、時間がない時こそ読書を楽しむべきなのだ。行き詰まって、本を開いたら、大切なことに気づいた。

 珈琲を飲み終えたら、仕事に戻ろう。心に余裕がないと、仕事も捗らない。そんな当たり前のことすら忘れてしまう、忙しさとはなかなか闇が深い。
 ほんものの山に登る機会は滅多にないが、机上の山には毎日登ろうと思う。
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