『いろいろあった人へ』伊集院静(講談社)(2022.8.1)

文字数 462文字

 伊集院さんの小説は若い頃に良く読んだけれど、エッセイは読んだことがなかった。『大人の流儀』シリーズが売れていることは知っていたが、少し世代が違うので読んでもズレを感じるだろうと思っていたから、手にすることはなかった。
 にもかかわらず、1~7巻のベストセレクションである『いろいろあった人へ』を読もうと思ったのは、電子書籍の読み放題で偶然目にして、合わなければ途中で止めればいいと思ったこと、あとは『いろいろあった人へ』というタイトルが妙に気になったからだ。なんて、後ろ向きな読者なんだ、と著者に怒られそうだが、読書は期待しない時の方が大当たりと出会う確率が高い、ことを改めて教えられた。

 途中、何度も目頭が熱くなり、止まることなく最後まで読み切った。

 確かに時代も環境も違うけれど、その根底に流れる人間関係や成長、出会いと別れ、後悔、感謝は普遍的で、伊集院さんの熱くも冷たくもない日常の言葉にすっかりと魅せられた。描かれた出会いと別れ越しに、僕は違う顔や名前を思い出し、随分と遠くまで歩いてきたものだと気づくことができた。
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