三十年ぶりに歯を抜く(2022.11.26)

文字数 606文字

 昨晩、左下の親不知を抜歯した。
 数年前から、かかりつけ医は抜いた方がいいと提案してくれていたのだが、粘りに粘って抜かずにきた。しかし、ここにきて化膿が酷くなり、ついに「もう潮時です」と写真を見せられながら説得され、同意したものの、どうしても抜きたくなくて、抜歯予定日一週間前にもう一度相談した往生際の悪さが、僕の抜歯拒否の強さを物語っている。
 三十年前に親不知の手前の奥歯を虫歯で抜いた時に、出血が止まらず、とんでもなく不安な時間を過ごしたことがトラウマになっていた(抜歯してもらったのは今のかかりつけ医ではないが……)ことと、奥歯を失った後は親不知が奥歯の代わりをしてくれた感謝の気持ちで、何としても抜歯を回避したいと思ったのだ。

 化膿が続くことで全身にも悪影響を及ぼすことと、抜かなくてもいずれ抜けてしまうだろうと一週間前に改めて説明され、納得した……はずなのに、昨晩も「やっばり、抜かないといけませんかね?」と麻酔注射の直前まで抵抗したのだが、かかりつけ医から「やめてもいいですよ」と言われて「お願いします」と小さな声で答えて、親不知に別れを告げた。

 一夜明け、三十年前のように出血が止まらない、ということもなく、痛みも今のところ大丈夫そうだ。奥歯と親不知がなくなった左下を今後どうするかは、ゆっくりと考えよう。まずは、傷口を癒すことが最優先だ。
 三十年間、奥歯の代わりをしてくれた親不知に感謝している。
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