少女たち~星野画廊コレクションより~(2023.9.2)

文字数 832文字

 京都文化博物館で開催されている「少女たち」へ足を運んだ。16時に入館して18時まで、とにかく人が少ないのでゆっくりと観ることができた。有名な画家ではなく、無名な画家を中心とした「少女」をテーマにした絵画展なのだが、とても良い作品で署名まであるのに、画家の詳細が分からない……という画も多く、純粋に作品を楽しむことができた。有名画家だと、それだけでありがたみを感じてしまい、「?」と思っても、何となく満足してしまうが、無名画家なのに作品レベルが高いと思わず唸ってしまう。とても意義のある展覧会だと思う。

 今回、注目度の高い笠木治郎吉という画家も謎多き無名画家らしいのだが、その並びで作者不詳(Tani)が三作品並んでおり、いずれも彩りが美しく無名どころか不詳というのが信じられないレベルである。署名があるのに、それらしき候補が当時の画壇にはいないというのだから、実に不思議だが、それでも我々の目に触れさせてもらえることに感謝したい。星野画廊の「良いものは良い」という意志が強く伝わってくる。

 僕が良いと思ったのは作者不詳(芳玉)の「花園の少女」、松村綾子「少女・金魚鉢」、幸田暁治「双子」、野田英夫「鏡を持てる少女」かな。もちろん、無名ばかりではなく野田英夫など有名な画家も含まれている。
 画家として興味を抱いたのは秦テルヲと谷出孝子。この二人の作品はどれも気になり、かなり立ち止まって観覧した。秦テルヲは独自性が秀逸で、好き嫌いはあるだろうけれど、一度観たら忘れられない作風だ。そして、谷出孝子は色彩感覚が優れており、後にデザイナーの仕事もされたらしいが、思わず見惚れてしまう。特に「ロバに乗る少女(満州)」は今回の展覧会の中では一番好きな一枚である。

 美術展は、どうしても「名前」で出掛けてしまう傾向があけれど、有名無名に関係なく「良いものは良い」という星野画廊の姿勢に敬意を表したい。京都の後も、全国を巡回するようなので、一人でも多くの人に観て欲しいと思う。
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