ユトリロ展(2023.11.19)

文字数 684文字

 昨晩、仕事帰りに京都駅の美術館「えき」ユトリロ展へ行ってきた。

 ユトリロの独自性は評価しつつも、特に好きな画家という訳でもないのだが、せっかく近くで展覧会が開催されているのだから、覗いてみようという軽い気持ちで、期待感を持たずに。まぁ、数字ばかり追いかける日々の気分転換にもなるだろうし。

 どんよりとした作風は、心を暗くするよりも、何だか落ち着く。晴れた空はほとんどなく、ほぼ曇り空なのだが、ユトリロの人生をきちんと知ることで理解が全く変わった。言い方が悪いかもしれないが、アルコール中毒の画家というイメージが強かったのだけれど、複雑な家庭環境で育ち、恋多き母親ヴァラドン(画家)がやがてユトリロの友人と再婚して年下のユッテルが義父となり、共同生活で精神バランスを崩してはアルコールに逃げてしまう気持ちも分からないでもない。そして、アルコール中毒に苦しんでいる時の画風の方が個性的で魅力が溢れているので、何とも言葉にならないのだが、ユトリロ自身も大きく揺れ動いていたのだろうな、と時代を追って作品を観ると良く分かる。

 僕はユトリロがすっかり好きになった。たぶん、現在の精神状況と同調したのだと思う。何だかとても安心するのだ。特にユトリロが描く教会の画を観ていると、凛とした気持ちになり、背筋が伸びる。心が苦しくなったら、ユトリロは画にすがったのだと思う。そして、教会を描くことでバランスを保とうとしたに違いない。

 生き方としては完全に夭逝タイプだが、71歳まで生きたユトリロ。とても不思議で魅力的な画家だ。もう一度書くが、僕は今回の展覧会でユトリロのファンになった。
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