『たびたびの旅』安西水丸(田畑書店)(2023.10.31)

文字数 632文字

 水丸さんのイラストが好きです。そして、水丸さんの文章も好きです。
 どちらも楽しめる『たびたびの旅』を書店で偶然手にして、これは買わなければ!! と即購入しました。文庫本サイズですが、シリーズと銘打ち、カバーはハードで1980円します。正直言うと「高いなぁ」と思いましたが、読み終えて「安いなぁ」と思っています。

 実に面白い。旅に出たくなる。飲みに出掛けたくなる。誰かに会いたくなる。あるいは、一人でのんびりしたくなる。

 水丸さんの文章は上手いと言うよりも味があります。つまり、水丸さんだから書ける文章であって、他の作家には書けない文章なのです。人柄が伝わります。料理や酒の匂いが漂ってきます。何て言うのかなぁ、ぼそりぼそりと話すのだけれど、とても気になる内容だから、思わず耳を欹ててしまうような文章です。話が上手い人よりも、話が面白い人よりも、口数は少なくてもぼそりと呟いた一言が印象的な人がときどきいますが、水丸さんはそういう存在…だと勝手に思っています。

 文章とイラストのバランスが絶妙で。いやぁ、水丸さん最高です。

 水丸さんはカレーと日本酒(特に〆張鶴)が好きなのですが、旅先でさらりとカレーを食べる場面が良いなぁ、と思います。僕もカレーは好きですが、どうしても旅先では地元の料理を食べたいから、なかなかカレーをチョイスすることはないのですが、水丸さんはあっさりとカレーを食べてしまう。時には、ビールを飲みながら。

 良い本に出合ったと心から感謝しています。
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