相田みつを美術館(2023.11.23)

文字数 1,099文字

 京都から自宅へ戻る途中、東京駅で改札を出て東京国際フォーラムの相田みつを美術館に寄ることにしたのは、相田みつをが目的ではなく、第二ホールで展示されている『運慶と快慶』六田知弘・佐々木香輔写真展を観たいと思ったからだ。特に六田知弘さんは11,000円する写真集『仏宇宙』を購入したくらい好きで、こんな機会は滅多にないし、しかも無料なのだから行くしかないでしょ。
 六田さんの写真は運慶が彫った仏像だが、写真集よりも更に大きなサイズで観ると圧倒される。今にも動き出すのではないか、という生命感に溢れている。もちろん、奈良や京都の寺院へ行けば実物を観ることができる訳だが、こんなに近くでは無理だし、写真のような角度からも無理だ。そこに写真の存在意義や六田さんのセンスや熱意が在ると言える。期待して出掛けたのだが、期待以上だった。そして、佐々木香輔さんは快慶。運慶に比べるとシャープで華やかさを感じる。運慶と快慶で作風が違うように、ふたりの写真家も各自の個性で仏師と渡り合う。実に興味深い写真展だった。

 そして、無料で素晴らしい写真展を観せて頂いたので、何だか申し訳なくなって相田みつを美術館にも入館することにした。(とても失礼な言い方だが、相田みつをのファンという訳ではないのだ)目にしたことのある書(詩)がいくつも並んでおり、本物を観るとやはり感動がある。詩と書を組み合わせることで、詩とも書とも違う相田みつをだから成し遂げられたオリジナリティを感じた。そして、僕は勉強不足を恥じたのだが、相田みつをは書でも素晴らしい実力者であることを知らず、ヘタウマ(味がある)だとずっと思っていたのだ。ピカソが幼年期からとんでもない描写力を持っていて、年代とともに様々な画風に挑戦して、子供でも描けそうな(もちろん実際には描けない)絵に辿り着いたように、相田みつをも同じように基礎をしっかりと学び、入賞の常連となった後に、これでは駄目だと僕が知っている書へと変化して行ったのだ。そして、長い詩も書いており、その中で大事な箇所を書として書いたことも初めて知った。書も詩も素人なのかと勝手にイメージしていたが、どちらも玄人で、様々な挑戦や工夫を重ねた結果、あのスタイルに辿り着き、多くの人々の心に響くまでに至ったのだ。何も知らずに本当に恥ずかしいと思った。

 はじめて観たふたつの書に心を強く打たれ、ポストカードを買った。内容は秘密だが、今の僕にはものすごく響く言葉だった。相田みつをさんという人間は、深いな、凄いなと感動して美術館を後にした。

 東京駅から直ぐだし、新幹線を利用した際に立ち寄りやすいので、おススメです。
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