『月の満ち欠け』佐藤正午(岩波文庫)(2023.9.11)

文字数 342文字

 佐藤正午の小説は一筋縄ではないよなぁ。
 ファンタジーなのか、恋愛なのか、複雑な事象と思いが積み重なり、すれ違い、頭を使いながら読み進める作業が実に楽しい。この人の小説には「切なさ」がある。なんてつまらない言葉なのだろうと自分でも情けなるが、やはり「切なさ」としか言いようがない。
 だから、読み終えた後の余韻が独特なのだ。

 素敵な映画を観終えた感覚なんだよね、ほんと。しばらく、立ち上がれず、余韻に浸る。

 生まれ変わりを信じるか否かは、生まれ変わって、再び会いに来て欲しい人がいるかどうか。『月の満ち欠け』を読んで、僕は一人の顔を思い浮かべている。それは恋愛感情ではない。再会したら、深々と頭を下げて謝りたいのだ。心残りは人それぞれ。

 佐藤正午の小説は一筋縄ではない。が、素晴らしい。
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