映画「すべてがうまくいきますように」(2023.2.15)

文字数 500文字

 テーマは尊厳死なんだろうけれど、どの立場で観るかで随分と感想が変わるような気がする。残される娘たちであるならば、自分を納得させようと試みては、いや違う、いやいやこれで良かったのだ、と揺れ続けるだろう。自分は納得せずとも、尊厳死を願った父親の意志を尊重したことを拠り所とするしかないと思う。「もう体が思うように動かないから、死にたい」と語る父親は、自分自身に納得できずに生きている意味を失うとともに、娘たちに迷惑を掛けたくないという思いもあるのだけれど、自分だったらどうするだろう? と考えてしまう。映画館でエンドロールが流れ始めて、嗚咽があちらこちらから聞こえた。亡くなった父親を思ってか、父親が尊厳死した事実なのか、あるいは残された娘たちの複座な気持ちを慮ってなのか、は分からないけれど、僕はずっと考えていた。自分だったらどうするだろう? と。とても重いテーマではあるが、避けて通れない大切なテーマであり、正解も不正解もない描き方が素晴らしいと思った。登場人物全員が違う。当たり前だけれど、みんな微妙に考えも立場も違うのだ。それを無理に同じ方向にまとめ上げないから、いつまでも心に残るのだと思う。
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